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【スポーツインフォメーション堺 Vol.12】 |
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●スポットライト |
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残り23秒からカウントダウンが始まった。声が場内に響き渡る。…3・2・1。東京ドームに大歓声が上がった。2002年1月3日、学生代表の関西学院大学(以下関学)が社会人代表のアサヒ飲料を30対27で下しアメリカンフットボール日本一になった瞬間だ。ゲーム終了間際に負傷退場した石田は、やったという感激を胸に安堵の表情を浮かべてベンチサイドで座っていた。石田力哉。関学のディフェンスの要としてまたキャプテンとしてこの一年、チームを引っ張ってきた。その実力はオールジャパンとしても評価が高い。
学生と社会人チームが日本一をかけて対戦するライスボウルが創設されて今年で19年。
今回5度目の挑戦で関学は、初めて日本一の座についたのだ。快挙の始まりは去年1月にさかのぼる。その前の年甲子園ボウルで法政大学に敗れた関学では、新キャプテン石田を中心とした新しいチーム作りが始まった。その冒頭石田は今年のチームの目標として「ライスボウルでの優勝」即ち「日本一」を目標として揚げたのである。当時のことを振り返り、石田は言う。「普通は学生チャンピオン=甲子園ボウルの優勝を目標にしますね。でもどうせやるなら日本一だと思ったんです。そりゃまだまだなところはありましたし、チームメートからももっと足元を見すえてという意見も出ました。でも結局みんなで選んだキャプテンが言った目標だからということで、最後にはみんなが納得してチームの目標になりました。」それからは文字通り死にものぐるいの一年だったという。
・日本一になるためまず何に取り組みましたか
「一対一を徹底的に強化しました。相手に一対一で勝つこと。スピード・体力・技すべてにおいて相手より強くなること。このことを徹底しましたね。チームプレーといっても基本は一対一。個人のレベルが上がらなくては、決してチーム力はupしないですから。」「特に社会人に負けない強さとうまさ=テクニックを付けることを念頭に置きましたね。」
・普段の練習はどういったものですか。
「基本的に筋肉トレーニングは個人の責任に任せているから、しません。練習メニューも自分たちで考えます。グラウンド整備も含めて練習の準備は、比較的時間の融通のきく4回生が中心にやります。」「自分たちが日本一になりたいから自分たちでやるという意識が、4回生には特に強いですね。」とてもシンプルで合理的な考えである。「大学で初めてアメフトに入ってくる学生も多くいます。そんな学生が先輩の下働きだけでアメリカンのおもしろさや良さを解らずにやめていくなんてちょっと寂しいでしょ。」とも言う。でも、勝つためには「試合はシビアです。やはり勝チームで臨みますから。当然試合に出られない部員も出てくるわけで。」関学では部員120名。そのうち一試合での登録選手は平均60名~80名である。「好きでクラブに来ている者も勝つためには仕方がない」とチャンピオンスピリットで乗りきってきた。
・キャプテンとして特に気を付けていたことは。
「後輩に対する指導ですね。なるべく理解させると同時に考えさせる。自分で考えることが大事なんです。試合中でも常に状況判断し相手を分析し行動しないといけない。基本的なフォーメーションがあっても、『判断すること』が加わらないとプレーとして成り立たないんです。」事実今回のライスボウルでもそういったプレーが随所に見られた。中でも特に素晴らしかったのは、第2クォーター始めにパンター榊原がパントと見せかけて突進しダウン更新したビッグプレー。状況判断して瞬時に決行した。このプレーが関学に流れを引き寄せた。つづくQB尾崎が見せたスクランブルプレーでは、39ヤードのタッチダウンランとなった。普段の練習から常に考えることを身につけていたからこそできたプレーだった。「また、負けることもあるんだと常々言っていました。負けてわかることも多くある。だから、負けることを認めることは大切なんです。
・この一年の勝因は?
「それはコーチのおかげです。戦術、戦略すべて僕たちのことをわかってうまく導いてくれました。コーチがいなかったら今の僕たちはいなかったです。」
・試合前に特に気を付けていることは。
「必ず部屋を綺麗にして家を出ます。後誰が部屋に入っても恥ずかしくないように。」文字通り『命がけ』ということをさらりと言ってのける。「それぐらいの覚悟がなかったら死にものぐるいのプレーはできませんから」
この一年間「日本一」という言葉の重みを背負ってきた石田は、そのことを達成した誇りと満足感を胸に来期コーチとして関学に残る予定だ。「じゃ、来期の目標は日本一連覇ですね。」と聞くと「いや、それは次のチームがみんなで決めることですから。」と即座に返ってきた。どこまでも主体性を重んじることを崩さない。これを伝統と呼ぶのだろうか。ますます関学と石田新コーチから目が離せない1年になりそうである。
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