【スポーツインフォメーション堺 Vol.16】
●スポットライト/柔道 井上康生さん
康生・その素顔に迫る

日本中がテレビに釘付けになったあのシドニーオリンピックから、早3年が過ぎようとしています。当時、日本柔道のエースとして活躍し100kg級で見事金メダルに輝き、一躍柔道界のスーパースターとなった井上康生さんは、現在来年のアテネオリンピックを目指し、自らの柔道により磨きをかけるべく厳しい練習と試合の日々に取り組んでいます。
さる5月31日と6月1日に堺市金岡公園体育館で開催された「53回全日本実業柔道団体対抗大会」の前日、試合を明後日に控えお忙しい中インタヴューに応じていただきました。いつもは試合一辺倒のインタヴューに慣れている井上氏ですが、今回は子どもの頃から今に至るまでの柔道の日々を普段の生活を交えて語っていただきました。題して「スーパースターの素顔に迫る」いかなる次第になりますか。乞!ご期待!!

柔道を始めたのは、何歳の時からですか。
柔道は5歳から始めました。父が警察官だったこともあり、警察の道場で自分より大きな人を投げるのを見て憧れ、自分も柔道をやりたいと思いました。

上を目指すようになったのはいつ頃から。
小さい頃から負けず嫌いの性格で、当時はどれだけ本気だったかわかりませんが、柔道を始めた頃から上を目指すと話していました。いわゆる、よくある子どもに対する質問で「将来の夢は何ですか?」「オリンピックの選手です。」を子ども心にちょっとまじめに答えていましたね。高校時代には、世界に目を向けて考えるようになりました。大学生の時、全日本で優勝し完全に世界を意識するようになりましたね。

子どもの時はどのような練習をしていましたか。
宮崎県の地元の道場に通っていました。小学生の頃は5時30分から2時間。中学生の頃は、4時間以上稽古をしていました。非常に厳しいところでした。また、父からも直接指導を受けましたが、この頃に柔道の基本を鍛えられたと思っています。

現在、普段から特に重きをおいている練習はなんですか。
自分の基本となる練習は、打ち込みや投げ込みがすべてだと思っています。

試合に挑む時、一番大事なことは何ですか。
挑戦する気持ちを持つこと。特に勝ち続けているときほど、初心に帰ることが大切だと思っています。
試合前に緊張することや、ジンクスみたいなものはありますか。
あまり緊張しないタイプなので。ジンクスといって特にはないのですが、自分が今までやってきたことも含めて、自分を信じることですね。

いままで、大きな壁にぶちあたったことは。また、それをどのように克服しましたか。
特に1999年の頃、試合に臨むと負け、母を亡くした時はショックが大きかったです。しかし、世界選手権に出場することで、自分としては一皮剥けたと思います。今思うことは、「とにかく挑戦あるのみ」です。

今まで、一番きつかった試合は。
すべてがきついと思います。早く勝負がついても、時間がかかる試合であってもきついと思います。

今まで一番思い出に残った試合は。
やはりオリンピックです。

自分の柔道で一番大切にしていること(スタイル)は何ですか。
常に攻撃すること。自分の柔道は1本を取りにいくことなので、技に磨きをかけたいと思っています。

自分がイメージする究極の柔道とは。
無意識のうちに相手に技をかけて1本勝ちを決めることですね。

目標とする人はいますか。
山下泰裕先生です。柔道はもちろんのこと、人間として尊敬でき、社会貢献してきたことにもスケールの大きさと魅力を感じます。
自分の柔道でどんなことを観て欲しいですか。
やはり攻撃面ですね。一瞬で勝負のかたがつくような攻撃。見ているほうも目が離ないっていう緊張感があるじゃないですか。

これからの目標は。
9月に世界選手権があるので、金メダルを目指したい。もちろん、明後日の全日本実業柔道団体対抗大会も団体の一員としてがんばります。

10年後どういう自分でありたいと思いますか。
35歳になっているので、現役をやっているかどうかはわかりませんが、いずれにしても柔道界と社会に貢献できる人間でありたいと考えています。

柔道をしていて、一番よかったことは何ですか。
いろいろな人と出会えたこと。柔道を通じて、たくさんの人と出会い、助けてもらったこと、バックアップしてもらったことを感謝しています。

普段の生活で特に気をつけていることはありますか。
よく食べ、よく寝ること。それにストレスをためないことですね。

好きな食べ物は何ですか?また食事について、特に気をつけていることはありますか。
好き嫌いなく何でも食べます。強いて好物といえば肉かな。普段は、栄養のあるものをバランスよく摂れるよう、栄養士にアドバイスしてもらっているし、サプリメントも摂るように心がけています。

海外遠征の時、特に気を付けていることはありますか。
やはり体調管理だと思います。特に水は気になるので、日本でも生水は飲まないです。

現在、柔道に取り組んでいる子どもたちにメッセージを。
ぜひ、生の柔道を見て柔道の面白さを知って欲しいと思います。

最後に、今の小・中・高校生に「ひと言」お願いします。
のびのびと子どもらしく育って欲しいですね。最近の子どもたちを見ていると、夢が薄くなったように感じることがあります。特に目標や夢を持って、それに向かって頑張って欲しいなぁと思います。

映画を観ることや読書が趣味。普段は寝る時間が一番幸せを感じるという井上選手。
もちろん仲間とお酒を飲むのも好きという普通の25歳。インタヴューも始終リラックスした雰囲気で答えてくれました。二日後の団体戦で、綜合警備保障チームとしては惜しくも準決勝で旭化成に敗れたが、井上選手の個人戦績は、得意の内股で2試合1本勝ち、1試合反則勝ちとすべての試合に勝利しました。スーパースターは順調な仕上がりを遂げているように思えます。来年のアテネオリンピックでは、再びあの感動を私たちに与えてくれることを大いに期待したものです。

井上康生さん
1978年5月15日、宮崎県日南市出身。大宮中→東海大相模高→東海大→綜合警備保障株式会社(東海大学大学院修士課程在学中)。6歳から柔道を始める。得意技は、内股、大内刈り、大外刈り。主な成績は、00年シドニー五輪優勝。99年バーミンガム、01年ミュンヘン世界選手権優勝。98年バンコク、02年釜山(無差別級)アジア大会優勝。01~03年全日本選手権優勝。97,00年2位。00~01年全日本選抜体重別優勝。98,03年2位。その他優勝多数。