【スポーツインフォメーション堺 Vol.5】
●特集…堺市民オリンピックを見る! ―スポーツでつながる地域の人々―
郷土堺への思い「堺三大まつり」
昭和30年代後半から堺市は、18万規模の泉北ニュータウンの建設などによって人口が急増し、大都市として発展を遂げてきました。ところが、一方では人口の急増に伴い小・中学校の新増設、小学校区の分割再編が必要となり、これまでの「むら」や「まち」への意識がしだいに薄れる結果となりました。
このように大都市に成長した堺市の中で、各方面から提起されてきたのは「薄れてきた地域間の連帯意識を高めよう!!」との声でした。
こうした状況の中で、『堺の誇りを知るまつり』をスローガンに昭和49年堺まつりが、そして『市民総ぐるみ』を合言葉に小学校区が一堂に集まって行う生涯スポーツイベントとして、昭和50年に堺市民オリンピックが、続いてその翌年には堺市の農業を市民へアピールするために農業祭がスタートしました。これが「堺三大まつり」の始まりです。

堺市民オリンピックのあゆみ
こうして堺市民オリンピックは、ソフトボール、バレーボール、陸上、卓球の4種目、58校区約5千名の参加でスタートしました。そして市制90周年を記念した第4回大会には55歳以上を対象としたゲートボール競技が導入され、文字通り『市民総ぐるみ』、若者から高齢者まで参加できる生涯スポーツ大会が実現しました。
さらに、第11回大会からは全校区が参加し、市制100周年を記念した第15回大会には新しく綱引競技も加わって参加者1万人を超えるスポーツイベントとして定着してきました。
このように市民オリンピックは、回を重ねるごとに地域住民のスポーツへの参加を広げつつ、今年で第25回大会を迎えます。

堺市民オリンピックの原動力は各地域の取り組みの中に!!
広がる裾野 各校区のスポーツ活動
昭和32年に堺市体育指導委員会が44名の委員を持って発足しました。その後、各校区や核自治会の協力体制が強まり、校区の体育(スポーツ)振興委員会が組織され、各地域で体育大会や競技会が行われるようになりました。
そのことが昭和50年に第1回堺市民オリンピックが金岡公園にて開催される原動力になったのです。また、開催を期に各地域の組織やスポーツ行事がますます広がっていくことになりました。
平成8年に堺市教育委員会社会体育課(現スポーツ振興課)が実施した調査によると、90校区の約7割が校区運動会や市民オリンピック予選会を実施しています。また約3割の校区では、市民オリンピック予選とは別に、インディアカ、グランドゴルフなどの各種スポーツ大会も盛んに行われています。

やっぱりすごい!!地域のネットワーク
みんなで造り、みんなが主役のスポーツ大会は地域のネットワークを強化しています。
運動会や体育大会が何年も盛大に行われる地域は、「みんなを主役」にするリーダーと組織が存在しています。

堺市体育指導委員会委員長をされている東陶器校区・体育指導委員の西井勝さんと、同じく体育指導委員の近藤小百合さんを訪ねて
主役の校区体育大会があります。仮装行列を初めいろいろと種目に工夫がなされ、参加者は1千300人を越えるようです。最初の頃は秋に行っていましたが、祭や稲刈りの時期と重なるので、数年前から5月の第2日曜(母の日)に行われるようになりました。そのエネルギーが市民オリンピックにつながっています。
西井さん達は、「地域のつながりは何年もかかってできるものです。役員も継続が必要です。各自治会も継続して活動できる体制を確保してくれています。」と語ってくれました。
市民オリンピックの予選会も充実していますが、年齢制限(25歳以上男子)のあるソフトボールなどでは、5月に年齢制限のないレクリエーション大会を行い、若い選手を次期選手候補として確保しています。継続につなげる地域の人たちの様々な工夫が生きています。

白鷺校区・体育指導委員の山下博史さんを訪ねて
昭和43年から行われてきた校区運動会は、各地区の幼児から高齢者までが白鷺小学校に集い、楽しい交流が行われています。このときに陸上競技の400mリレーの選手選考が行われます。
また、この校区ではインディアカやショートテニスなどの市民オリンピックにない種目の大会も毎年行われています。
市民オリンピックでは、いつも選手選考に苦労されているようですが、当校区では、毎年全種目の種別に出場し、しかも昨年はほとんどの種目別で入賞されています。ここにも地域ネットワークの底力がありました。

津久野校区・体育指導委員の宮風輝清さんを訪ねて
津久野校区では、旧踞尾(つくの)6ヶ村と新しく転入されてきた人たちが住む地域との交流を深める上で、堺市民オリンピックは大きな役割を果たしてきました。
旧踞尾6ヶ村には古くからの『だんじり祭り』があるが、新しい地域にはありません。しかも同じ校区でありながら交流する機会もなく、時には対立さえ起きることもありました。そこで校区の人たちが何度も話し合い、校区に住んでいるすべての人に共通の『まつり』として「校区駅伝大会」を行うことになりました。毎年2月に実施されて今年で13回大会を迎えました。
この駅伝大会は、原則として自治会内でチームを結成し、一般約25チーム、小学生約20チームが毎年エントリーしています。コースは校区内の全ての地域を通り、町中の人たちの声援の中で競い合います。
その後、平成3年には駅伝大会で培った地域力を活かし、1千人以上が参加する校区運動会が始まりました。校区の体育指導委員が中心となり自治会、PTA、こども会、青少年指導員などの各組織がみんなで運営し、新旧地域の交流とスポーツの振興、さらに堺市民オリンピックの代表選手選考を目的に開催されています。
このように津久野校区は、堺市民オリンピックのねらいを校区の事業に結びつけ、さらに地域の人がみんなで新しい交流事業を造りだしてきました。宮風さんは「地域の組織がしっかりしているのでみんな協力して運営もできるし、すばらしい交流の場になっています。」「一番苦労したのは駅伝を実施するときの交通整理の問題、そしてどの行事も事故の対策が大変でした。」と語ってくれました。この地域の人々の熱意と深い信頼を感じました。


今回は堺市教育委員会のスポーツ振興課を通じて、体育指導委員(体指)の方々に校区の取り組みのエピソードや苦労話を募集しました。インタビューをさせていただいた3つの地域以外の声をご紹介します。

土師校区体指の石橋元六さん
 「選手集めに苦労はするが、盛り上げるように頑張っています。」
湊校区体指の南井佐夫さん
 「陸上競技の出場者を探すのに苦労する。競い合って出てくる子どもがいない。種目の見直しが必要ではないか。」
上神谷校区体指の柳谷文雄さん
 「予選会参加チームの減少、力の差、高齢化などへの対応策を考えたい。」
大仙校区体指の田中実さん
 「市民オリンピックより10年も前から各種スポーツ大会を行ってきており、市民オリンピックにも優秀な選手を送り出してきています。しかし、高齢化が進んできており、その対応策に頭を抱えています。」
神石校区体指の吉田光明さん
 「全種目出場を目標に取り組んでいます。それを支えてくれている各種目の監督選手のみなさんに感謝しています。」
神石校区陸上部監督の橋本美江さん
 「今年も陸上のメンバーは揃いました。選手の皆さん頑張ってください。」
神石校区の第1回から欠かさず参加されている今も現役選手の原雅子さん
 「準備からいろいろ大変でしょうが、今年も楽しみにしています。」
など多くの方々から、今後の課題も含むお便りをいただきました。
取材を通じて、各地域の取り組みが、人を育て、地域を育て、そして堺市民オリンピックを今後さらに発展させるための原動力にもなると感じました。

堺市民オリンピックの運営を支える人々
市民オリンピックが毎年無事に開催できるのは、多くの陰の力があるおかげです。
その一つ、試合結果の集計・速報と入場行進の誘導を担当しているのが堺市ボランティアスポーツ指導者会です。今でこそファックスがあり楽にはなりましたが、以前は各競技場から自転車で集計会場まで持って来ていました。次々に入ってくる結果を集計し、中央の速報板にまとめる作業は一日中気が抜けません。表には見えない大きな役割を担っているのです。
もう一つは、各競技の運営および審判や判定を担当している堺ソフトボール協会、堺市ママさんバレーボール連盟、堺卓球協会、堺市ゲートボール連盟、堺綱引連盟、堺市陸上競技協会、そして堺市立工業高等学校・堺女子高等学校・府立金岡高等学校・府立堺西高等学校の運動部員です。競技進行にとって最も重要な役割を担っています。